言葉を用いない詩
Wordless poetry
寺内大輔声小品集
Short pieces for voice by Daisuke Terauchi
(2002年作品)
楽器なし、電気的効果一切なしの、ナマ声録音。
「詩のボクシング」で響きわたった、エネルギーと色彩溢れる声。
広島大会決勝戦 <即興詩対決> における伝説的演奏「田中真紀子」も、再現収録。
寺内大輔即興演奏の魅力を凝縮。意欲的小品集。
言葉を用いない詩
私は言葉を用いない。
表現は、特定の感情、情景、メッセージなどを意味しない。
どのような音を、どのように散りばめるか。
興味はそれだけである。
山、木、空、海、月、夕焼け、石ころ、蝿、ペットボトル、とんがり帽子・・・・・。
人は、あらゆるものに感動することができる。
しかし、山や木は、何らかの意思や感情を伝えようとはしない。
人が、それらに様々な感情を投影して、何かを受け取っているに過ぎないのだ。
私のねらいは単純である。
声によって、聴衆の内側に潜むものを呼び覚ますこと。
伝えることよりも、受け取れる空間を作り出すこと。
暗闇に向けて放たれる、声。
エネルギーを託されて、その動きを鮮明に描きながら、空間を満たす。
私と、私の声だけが存在する、美しく孤独な空間。
ある聴衆は、その空間を覗き見る。
ある聴衆は、その空間を観察する。
ある聴衆は、その空間を体験する。
彼らは、それらを詩的に受け止め、何かを見出す。
彼らの内側にある、きわめて個人的な何かを。
詩人は私ではない。聴衆である。
(ライナーより)