王の主題〜アルトサクソフォンのために〜(2006)  
 Friedrich's Theme for alto saxophone 
 

 編成:alto saxophone  演奏時間:7 minutes
 初演日時、場所:2006年9月14日、Encountering composers
         Vincentiuskerk, Amsterdam  
   

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 解説:
 1747年5月,J.S. バッハは、プロシャ王フリードリッヒ大王に謁見を許された。フルートの名手でもあったフリードリッヒ大王はバッハに主題のメロディーを与え、フーガの即興演奏を求めた。バッハは,後にそれをまとめ直し「音楽の捧げ物」(BWV1079)としてフリードリッヒ大王に贈った。
 フリードリッヒ大王がバッハに与えた主題は,堂々とした跳躍と半音階での順次進行が見事に同居し,大変魅力的である(バッハが大王にある程度の手引きをしたという説もあるようだ)。 私は,この旋律を使って自分なりに作曲してみたいと感じ,この「王の主題〜アルトサクソフォンのために〜」を書いた。ここでは,フリードリッヒ大王の主題を反復して提示している。その過程で,音の強弱の操作による聴覚的距離感の変化と,跳躍による旋律の認識の変化をもたらすことが音楽的な目的である。
 本作は,2006年,トランペット奏者Amy Horveyからの委嘱で,カナダ・コンサートツアーのために書いた作品のアルトサクソフォン版である。トランペット版との違いは,サクソフォンの敏捷性を生かし,速いテンポに設定されていることである。
 なお,この録音は,初演のためのリハーサル時のものである。リハーサルはアムステルダム音楽院の練習室で行われたが,隣室から漏れてくる他の学生の練習も一緒に収録されている。通常,こうした雑音は歓迎されないものであるが,この時には,音楽と音風景との関係が大変興味深く感じられた。偶然録音されたものではあるが,背景となっている音風景にも注意して聴いて頂きたい。


 演奏:Filip Davidse





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