くちづけ口琴 (2007) Kissing Mouth harp



 先日,ベトナム口琴の新たな演奏法を発見した。

 映像を見ればすぐにご理解頂けると思う。「ふたりでひとつの口琴を演奏する」という方法である。口琴はひとつだが,共鳴体である口がふたつあるため,より複雑な音響効果が可能である。例えば,ひとりの奏者が素早く「およよよーん」と演奏すると同時に,もうひとりの奏者が遅いテンポで「あっらっらっらーーん」と演奏すれば,それらが交わることによって新たな響きが生まれる。一人での演奏に比べ,音色の可能性は飛躍的に拡がるのである。
 ただ,響きそのものに関してはひとりで出す音に劣ってしまう。これは,口琴をふたりの奏者の間に位置させるために,ひとりひとりの口からはやや遠くなってしまうことや,音が内側に籠りがちになり外に向かいにくいことが原因であろう。だが,いわゆる「良い響きの音」よりも,繊細で複雑な音色の表現に向いている奏法と言える。
 お互いに音を注意深く聴き合いながら,異なる奏法の関係性を楽しむことが,この奏法の醍醐味である。

 しかしながら,この奏法にはある種の問題点もある。それは奏者同士の唇が触れてしまうことだ。ある程度理解ある人同士でなければ,この奏法には抵抗があるだろう。私自身も,いくらこの奏法に興味があるとはいえ,誰彼構わずこの奏法を試してみたいとは思わない。

 なお,この奏法は,基本的にはベトナム,モン族タイプの口琴が最もふさわしいと思われる。他の金属口琴では,顔が邪魔になって弁を弾けないからである。





 演奏:三宅珠穂、松田あゆみ
 プロデュース:寺内大輔





 


追記:
この動画は、動画投稿サイトYou Tubeで公開された初日(2007年2月4日)、「最も観られたヴィデオ(Most Viewed)」音楽部門ランキング100入りを果たした。
2007年6月には, パリの映像フェスティバル「Filmer la musique」に入選。同フェスティバルで上映された。



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