「彩〜sai〜」
音楽は、空気の色を変え、場を彩る。
極めて強烈な個性を持った作品たち、そしてHERの放つ「彩」。
空間は、どのような色に染まるのだろうか。
1.フランチェスコ・ランディーニ(Ca.1325-1397)[哀れみを持つことはあるまい]
Francesco Landini, Non avra mai pieta
Female Voice(永井志奈), Vn(山田利香), Cl(田中晴子)
14世紀の音楽。
漂う旋律、そして響き。
シンプルな音楽が、その魅力をむき出しにして空間を満たす。無駄なものは、ない。
本日の演奏でも、現代の楽器を用いてはいるが、余分なものは付け加えていない。
2.ギョーム・デュファイ(Ca.1400-1474)[気高い貴婦人]
Guillaume Dufay, Dona gentile
Female Voice(永井志奈), Vn(山田利香), Cl(田中晴子)
ランディーニに比べ、音楽はやや複雑になった。
歌っているのは、歌だけではない。
歌と楽器は、曖昧な支配関係の中で、微妙な凹凸を浮かび上がらせる。
旋律のたゆたい、そしてそれらの穏やかな戯れに、酔う。
3.甲斐 説宗(1938-1978)[ヴァイオリンとピアノのための音楽 II]
Musik
fur Geige und Klavier II
Vn(山田利香),
Pf(石田最弓)
無機的な音が繰り返され、穏やかに変化する。
極めて禁欲的な音の振る舞いは、音への観察を促す。
4.永田 実穂(1971-
)[ザ・ソーン〜茨(いばら)〜](初演)
The
Thorn
Marimba(奥本絢子)
この音楽を、どう聴くか。
作曲者は、聴き手に問いかけているのではない。聴き手に委ねている。
変化することなく、度々現れる動機。しかし、それはいつも同じように聴こえる
とは限らない。時には、周囲の状況によって、違った色を放つ。
聴き手の意識に、軽い揺さぶりをかけながら、淡々と音楽は進む。
intermission
--------「ナーラーヤーナの牛」テキストより。