E. Bozza:Andante et scherzo pour Quatuor de Saxophones
E. ボザ:アンダンテとスケルツォ

 まずは旋律に耳をかたむけよう。
 情緒を込めて歌われる旋律は、各楽器間を移ろいながら、淡い色彩を放つ。旋律に満たされた空間は、聴き手を酔わせるに充分な趣を醸し出すだろう。
 後半、音楽は一転する。それぞれのパートは、楽しげに戯れながら、速いテンポで前進する。演奏者たちの息づかいにも注目して、生演奏ならではのスリルや音楽の存在感も味わっていただきたい。


I. Gotkovsky:Quatuor de Saxophones
I. ゴトコフスキー:サクソフォン四重奏

 音楽において、『音色』という要素が、これほど重要だとは。
 各パートは、時には絡み合い、また時には一体となって、強烈な印象を持った独特の色を作り出す。
 派手な曲ではない。静的でありながら、音楽はじわじわと確かな力をもって、聴き手をその音世界に引きずり込んでいく。


休憩


J. Rueff:Concert en quatuor pour Quatuor de Saxophones
J. リュエフ:サクソフォン四重奏のためのコンチェルト


 サービス精神、とでも言えば良いだろうか。
 ユーモアに富んだ6つの小曲は、洗練された美しさと、軽業師のようなスピード感を合わせ持ち、心地よく浮遊しながら、あの手この手で楽しませてくれる。
 聴き手の予想を見透かしたような展開に、ただただ耳を奪われる。各曲は、おいしいところだけをかっさらって、あっという間に姿をくらましてしまう。
 思わずニヤリとしてください。


J. Cage:Four
J. ケージ:4


 林の中にひとり、自然の音に耳を澄ます。
 Fourを聴くことは、そういう体験に似ている。
 演奏時間は12分。しかし、どこから聴き始めてどこで聴き終わっても良いような、まったく展開のない音楽である。
 指揮者は時の経過を示すのみ。そこには在るのは、ただいくつかの音。
 聴く。
 耳だけではなく、全身で、瞬間ごとの響きを味わおう。
 そして12分後、曲が終わった時に、あなたはどういう感覚に包まれているだろうか。


S. Reich:New York Counterpoint
S. ライヒ:ニューヨーク・カウンターポイント

 模様。
 小さな音素材の組み合わせによって描かれた模様は、空間に雄弁に立ちはだかる。
 まずは全体の響きに身を委ねてみよう。この暖かみを帯びた響きは、ライヒの音楽の大きな魅力となっている。
 全体の響きに慣れてきたら、細部の構造にも耳を澄ましてみよう。模様の近くで、音素材や各パートの関係性を観察すれば、それまでとはまるで違った性質の音楽にも聴こえてくる。興味深い。

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HERサクソフォンカルテット・リサイタル
2001年11月4日 エリザベト音楽大学ザビエルホール
直線上に配置
直線上に配置